公益財団法人 日本リトルリーグ野球協会
1. 目的
本ガイドラインは、暑熱環境における大会(試合)実施についての基準、開催時の熱中症予防対策、熱中症発生時の現場での対応などを定める。
2. 対象大会
本ガイドラインの対象大会は、協会主催の大会とする。その他の大会においても、本ガイドラインを準用することに努める。
3. 湿球黒球温度(WBGT=Wet-Bulb Globe Temperature)について
- WBGTは、スポーツ活動や労働時の熱中症予防の温度指標である。日本スポーツ協会(JSPO)の指針(図1)では、WBGT値が28以上で「厳重警戒(激しい運動は中止)」、31以上で「運動は原則中止」とされている。
- WBGTは近年「暑さ指数」とも呼ばれ、33以上と予測される場合、前日17時頃と当日5時頃に「熱中症警戒アラート」が、35以上と予測される場合、前日14時頃に「熱中症特別警戒アラート」が、気象庁より発表される(図2)。
4. 測定のタイミングと時期
- WBGTの計測は主管連盟担当者か記録員、審判員が行い、全会場・全試合で実施する。
- 1試合における計測は、試合開始前、2回終了後、4回終了後、試合終了後とする。試合開始前の計測は、できる限り試合開始直前に行う。延長戦の場合は2イニングごとに計測を行う。
- 計測は、日射のあるグラウンド上または運動実施箇所に近い同様の環境下で、地上から1.1~1.5mの高さで実施する。
5. WBGTに基づく大会(試合)実施の判断
- 大会運営者は、試合前日~当日に大会開催地域に「熱中症特別警戒アラート(予測WBGT値35)」または「熱中症警戒アラート(予測WBGT値33)」が発出された場合、当日の試合が中止・延期・時間変更となる可能性があることを参加者に事前に伝える。
- 試合開始前のWBGT値が31以上の場合、試合は原則中止・中断・延期とする。ただし、後述の「6. 熱中症予防対策」を十分に講じている場合は、主催者判断で実施可能とする。
- 試合途中でWBGT値が35以上になった場合は、試合の中断・延期・中止等を検討する。各会場責任者が主催者に報告・相談し、最終的に決定する。
6. 熱中症予防対策
審判の対応
- WBGT値28以上の場合、2回・4回・6回終了時に原則5分間の給水・身体冷却タイムを設ける。スタッフ・保護者・DH選手含め全員休息し、ウォームアップ等は禁止する。
- 延長戦(タイブレーク)の場合も、2イニングごとに5分間の給水・身体冷却タイムを設ける。
- 各イニングで守備時間が20分以上となる場合、5分間の給水・身体冷却タイムを設けることがある。
- WBGT値28未満でも、必要に応じて同様のタイムを設ける。
事前準備
- 大会前に、暑熱環境によっては中止・延期がある旨を周知する。
- 各チームには、飲料(飲料水・スポーツドリンク)と身体冷却用の氷・アイスボックスを持参するよう周知する。
- すべての参加者は、大会2週間前より暑熱順化を意識する。体調チェックシート等の記録も検討する。
- 大会前日は、食欲不振・過度な飲食・睡眠不足など体調不良の原因となる行動を避ける。
会場準備
両チームベンチは日差しを遮るようにし、可能であれば扇風機・冷風扇・ミストファンを設置する。
• 審判・関係者用の飲料や冷却用氷を準備する。
• 看護師など医療スタッフを配置し、全体を見渡せる位置から選手の体調を監視するのが望ましい。
• 散水設備のある会場では、可能な限りグラウンドに散水し、温度を下げることが望ましい。
7. 熱中症発生時の現場での対応
熱中症が疑われる症状がある選手を見つけた場合、直ちに医務室へ搬送する(保護者またはチーム関係者が付き添う)。
熱中症を疑う症状
他覚症状
ふらつき、生あくび、失神、大量発汗、痙攣、返事がおかしい、ボーっとしている等
自覚症状
- めまい、筋肉痛、筋肉の硬直(こむらがえり)、頭痛、不快感、吐き気、倦怠感、高体温等
- 対応は図2のフローに従う。水分摂取と身体冷却が基本。改善しない場合や判断に迷う場合は病院へ搬送。
- 意識がない場合は、直ちに救急車を要請し、一次救命処置(心肺蘇生+AED)を行う。
- 高体温の場合は重症の可能性が高く、救急車を要請し、全身(首から下)を冷却する。


