【テーマ23】
“同時”はアウト?セーフ?

ベンチに入ってしまいそうな暴投  これは、草野球でもよく問題になるケースですね。たとえばショートゴロ。一塁手が遊撃手からの送球を受けるのと、打者走者が一塁に駆け込むのが同時だったら、アウトかセーフか。子どものころの、原っぱでの野球を思い出して、もちろん審判などいませんから、「ああ、そういえば“同時はアウト!”“いや、セーフ!”と、よくもめてたなあ」と、懐かしく感じる方もいらっしやるのではないいですか。

 結論からいえば、答えはセーフです。もっとも、「同時はセーフ」とルールブックに書いてあるわけではありません。では、なにを根拠に同時をセーフとするのか。リトルリーグ競技規則6・05の(j)を見てみます。

 「打者がフェアボールを打った後、打者走者として一塁に達する前に、その身体または一塁に触塁された場合(は打者アウト) 」。

 逆にいえば、一塁に達したあとにタツチされたり、触塁されてもセーフ、というのは当然のことですね。そしてさらにこれをよく読むと、“一塁に達する前”ならアウトとある。“同時”というのは、一塁に達したあとではありませんが、一塁に達する前でもありません。ということは、セーフとは明記していなくても、アウトではないことになる。アウトではないのならセーフ、というわけです。なんとも重箱のスミをつつくようですが、ルールというのは法律ですから、条文どおり論理的にに解釈すると、そういうふうになるんですね。

 かつて日本の公認野球規則では、6・05(j)の 【注】 に「(前略)打者が一塁に触れると同時または以後に、野手が触球しても、打者をアウトにすることはできない」と、同時セーフが明記されていました。ただこれはルールの原文にはなく、日本固有の【注】はなるべくつけないという方針で、いまは削除されています。それでも、“同時セーフ”が明記されていながら、プロ野球でもカン違いすることがありました。

A.セーフです。

 西鉄ライオンズの名監督・三原脩さんが、自チームの守備の際、二塁での徹妙な判定に抗議。二塁の塁審は「同時だからセーフ」と説明しましたが、納得しない三原さんは、審判控え室にいた当時の二出川延明パリーグ審判部長に「ルールブックで確認しろ」と迫ります。そのときの二出川さんのセリフが、あの有名な「オレがルールブックだ」というものでした。もちろん、判定はくつがえりません。

 このように、一塁に限らずすペての塁で「同時はセーフ」なのですが、重要な例外もある。それは、第3アウトと走者が本塁を踏んだのが同時の場合です。たとえば、二死一塁で長打コースに打球が飛び、二塁を狙った打者走者がアウトになるのと、一塁走者がホームを踏むのがまったく同時だった場合。「得点」について規定している4・09(a)には、「3人のプレーヤーがアウトになって1回のイニングが終了する前に」走者が正規に本塁を踏んだら1点、とあります。また重箱のスミをつつくように解釈すると、“同時”は“イニングが終了する”ではありませんから、得点は認められない、というわけです。

 まあ、100分の1秒単位で見たら、まったくの同時というのはほとんどありえないでしょう。あくまで、人間の見た自での同時です。ですが、相撲ならば物言いがついて同体取り直しはあっても、野球では同時だからやり直し、というわけにはいきませんね。

 審判には「同時はセーフ」が常識でも、指導者の方や選手たちには、案外知られていないものです。あの三原さんさえカン違いするくらいですから。これを機会に、しっかりと頭に入れておいてください。

(※リトルリーグの競技規則は、一般の公認野球規則とは若干ちがう部分があります。)



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