【テーマ20】
ベンチに入ってしまいそうな暴投

ベンチに入ってしまいそうな暴投  今回は“投球”と“送球”で違う、という話から始めましょう。たとえばピッチャーの投げたボールが、ペンチなどボールデッドのエリアに入ったら、走者にはひとつ塁が与えられます。

 「打者に対する投手の投球、または走者をアウトにしようとする投手が投手板から塁に向かって投げた送球が、スタンドまたはペンチに入るか、あるいは競技場のフェンスまたはバックストップを越えるか通り抜けるかした場合(は一個の塁が与えられる)。この場合はボールデッドである」 (リトルリーグ競技規則7・05のh)。

 つまり、一塁にランナーがいれば、二塁に進塁するわけですね。これがたとえば、サードがファーストに悪送球して、ペンチに入ってしまった場合ならどうか。

 「(前略)送球が、(1)スタンドかペンチに入った場合(跳ね返って競技場内に戻った場合も含む)、(2)競技場のフェンスを越えるか、下をくぐり抜けるか、突っ切るかした場合、(3)バックストップ上の金網の傾斜面に乗った場合、(4)観衆保護用の金網にひっかかった場合(打者走者を含む各走者は、ニ個の塁が与えられる)。ボールデッドである」(7・05のg)。

 このとき進塁の基準になるのは、「悪送球が内野手による最初のプレイの場合は」投球時に各走者のいた位置です。打者走者は二塁に、一塁に走者がいたら三塁に進むわけですね。エンタイトル・ツーベースと同じことです。ただし、あまり起こらないケースですが、たとえば極端に高いバウンドのゴロの場合など、悪送球が生じた時点ですでに進塁していたと判断されれば、その塁が基準になります。

 投球に比べ、送球ミスのほうがひとつよけいに塁を与えてしまうのは割に合わない気がしますが、そもそも悪送球というミスで打者走者は一塁に生きます。ボールデッドエリアに入るのを、もうひとつのミスと見なすと、それに代償がつくのは理屈に合っているかもしれません。

 ちなみに7・05は、エンタイトルの規則といわれます。エンタイトルというのは、「権利を与えられる」という意味。打者走者を含む走者の安全進塁権を説明しています。野手が故意に帽子などで打球に触れた場合や、グラフを投げつけた場合は三個の塁が与えられますし、これらが送球に対してなされたら二個の塁が与えられる、などとあります。

 では、こんな場合はどうでしょう。ランナーを一、二塁に置いてピッチャーが暴投を投げてしまいました。キャッチャーが、あわててボールを追いかけましたが、ボールをつかむと勢い余って相手のペンチに転がりこんでしまった…。そのまま7・05(h)を適用すると、走者には一個の塁が与えられるので二、三塁になるはずですね。ところが、です。リトルリーグ競技規則にはありませんが、公認野球規則の7・05(h)には付記がある。

 「投手の投球が捕手を通通した後(捕手が触れたかどうかを問わない)さらに捕手またはその他の野手に触れて、ペンチまたはスタンドなどボールデッドになると規定された個所に入った場合、(中略)各走者に二個の塁を与える」

 つまり、ボールデッドのエリアに入るのは同じでも、なまじポールにさわったために、走者は二個ずつ進み、1点を失うハメになるのです。実際に、プロ野球でこういうケースがありました。88年の5月17日、ロッテー日本ハム戦。6回表一死一、二塁で、暴投を追ったロッテの小山捕手は、ボールをつかむと、追いついた勢いのまま三塁側のダグアウトに転がり込んでしまいました。走者は二個進むのですから、二塁走者はホームインし、一塁走者は三塁に達することになりますね。

 もし途中で、ポールがペンチに入ると判断できれば、小山捕手はその時点で追うのをやめてもよかったのです。そうすれば7・05(h)によって、進塁は一個認められるだけですから一死二、三塁ですむ。必死にボールを追ったのが裏日に出た、気の毒なケースです。

 ただ、ポールがペンチに入るかどうかは、なかなか判断しにくいこともあります。またぐずぐずしてボールを捕らなければ、ランナーはさらに先へ先へと進もうとしますから、どうしても現実にはボールをつかんでしまうでしょうね。小山捕手を責められません。もっとも、これはプロ野球の話です。リトルリーグの君たちは、ボールデッドのエリアに入るかどうかにかかわらず、つねに全力でボールを追ってください。

 なぜこんなルールができたのか。それは、カンのいい人なら気がつくでしょうが、ずるい行為を防ぐためです。キャッチャーが暴投を大きくはじいて、一塁ランナーはゆうゆう二塁を回り、三塁をうかがう気配。このときキャッチャーが、三塁に投げても間に合わないや、それならいっそのことボールをはじいたふりをして、ペンチに入れてしまえ! と、とっさに判断したら…7・05(h)によって一個の進塁ですみますね。三塁に進まれないですむ。

 付記があるのは、そうした悪質なプレーを防ぐためなのです。小山捕手の場合は、故意ではないのですが、結果的にこれに該当してしまったわけです。

 ルールの成立というのは、抜け道をさがす側と、それを防ごうとする側の知恵比ペみたいなものですね。実はこの付記は、日本の公認野球規則だけに載っていました。アメリカの規則書に登場したのは、76年のことだそうです。

(※リトルリーグの競技規則は、一般の公認野球規則とは若干ちがう部分があります。)



Copyright (C) JAPAN LITTLE LEAGUE. All Rights Reserved.