【テーマ17】
打者の足が打席から出ていたら…

 この夏の甲子園で、めずらしいシーンがありました。

 一死ランナー三塁でスクイズを試みました。ボールはうまく転がり、三塁ランナーはゆうゆうホームインです。ところが…主審は打者に反則行為を宣告しました。バントするとき、打者の石足が完全に打席から出ていたのをよく見ていたのです。

 公認野球規則を確認してみましょう。「打者がバッターボックスの外に出るか、あるいはなんらかの動作によって、本塁での捕手のプレイ及び捕手の守備または送球を妨害した場合(打者は反則行為でアウトになる)。しかし例外として、進塁しようとしていた走者がアウトになった場合、及び得点しようとした走者が打者の妨害によってアウトの宣告を受けた場合は、打者はアウトにはならない」〔6・06(C)〕。

 「無死または一死で、走者が得点しようとしたとき、打者が本塁における守備側のプレイを妨げた場合(走者がアウトとなる・後略)」〔7・08(g)〕。

 つまりこの場合、三塁走者はアウトとなり得点は認められず、打者はストライクをカウントせずに打ち直しとなったわけです。

 リトルリーグでは、投球が打者に達するまで走者は離塁できませんから、投球と同時に走者がスタートするスクイズは存在しません。ですがリトルリーグ競技規則6・06(C)、7・08(g00)でも、ほとんど同じことが定められています。スクイズに限らず、故意ではなくても打者が守備妨害してしまうことがないとはいえません。たとえば、打席から足が出てしまうことなどもあるでしょう。6・06は、そういう場合を想定したルールです。

 「6・06 打者が左記の反則行為を行なった場合は、アウトとなるものとする。(a)片足または両足を完全にバッターボックスの外に置いて打った場合。(b)投手が投球姿勢をとっているときに、打者が一方のバッターボックスから他方のバッターボックスに移った場合。(C)略」

 95年でしたか、当時オリックスのイチロー選手が、打つときに打席から足が出ているのではないかと騒がれたことがありました。6・06の(a)は「片足または両足を“完全に”打席の外に“置いて”打った場合」は反則、としていますが、逆にいうと“完全に”出ていなければ、正規の打撃と認められるというわけ。ステップした足の、一部でも打席内にあればOKですし、空中ならば打席の外に出てもいい。

 当時のイチロー選手は、まだ独特の振り子打法でしたが、結局は「打席の外には出ていない」ということで一件落着となりました。

 アメリカのホームラン王、ハンク・アーロン選手は、打席から足が出ていたばかりに、ホームランを1本ソンしています。ミルウォーキー・フレーブス時代の65年。アーロンは、3−3の同点から、ライトスタンドにライナーで一発を放ちました。ですが打った瞬間に、アウトを宣告されます。右打ちのアーロン、ステップした左足が、完全に打席の外に出ていたのです。

 実はその前の打席でも、アーロンは足を踏み出してポップフライに倒れていました。このとき球審は、また同じことをくり返したら即座にアウトを宣告する、と警告していたそうです。それにもかかわらず、相手の軟投派投手にタイミングをはずされ、イライラしたアーロンが、勢い余って足を踏み出したということです。

 それでは、問題。無死一塁でバントを試みましたが、バッテリーが遠くはずしてきたため、かろうじてパットに当てたがファウル。このとき、無理な体勢になったため、右足が打席の外に出てしまいました。この場合の裁定は? また同様に、パットに当たらず空振りだった場合はどうでしょうか?

 まず前者の場合。公認野球規則6・06(a)の[原注]には、こうあります。「本項は、打者が打者席の外に出てパットにボールを当てた(フェアかファウルを問わない)とき、アウトを宣告されることを述べている(後略)」。ですから、ファウルではありますが打者は反則行為でアウトになる。

 ところがこれが後者になると、空振りではありますがパットにボールを、“当て”ていないので、6・06(a)は適用されず、単なるワンストライクとしてカウントされます。

 つまり、足が出てしまったときは、苦労してファウルするよりも、空振りしたほうが結果的にはまし、というわけですね。ワンアウトとワンストライクですから。ちなみにこのとき、空振りした球を万が一捕手が後ろにそらしても、ボールインプレイ。ランナーは先の塁を狙ってもいいのです。

(※リトルリーグの競技規則は、一般の公認野球規則とは若干ちがう部分があります。)



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