【テーマ14】
サヨナラ本塁打のはずが…

サヨナラ本塁打のはずが…  あの長嶋茂雄さんの現役時代、その華々しい珍記録もさることながら、さまざまな珍記録を残しています。ことに自立つのが走塁。

 ルーキーだった1958年には、ホームランを打ちながら1塁ペースを踏みそこない、アピールアウト。記録上はピッチャーゴロになつています。これは触塁に失敗してアウトになった場合を定めた公認野球規則10・07(d)によるものです。

 あるいは一塁ランナーにいるとき、ヒットエンドランでスタートを切りましたが、打球はフライ。すでに勢いよく二塁を回っていた長嶋選手は、それが捕球されると、二塁を踏み直さずに一塁に引き返したことも3回あります。当然、アウト。逆走する場合は、ボールデッドじやないかぎり、すべての塁を逆の順序で、再度触れて行かなければならないのです(公認野球規則7・02)。

 60年には、一塁ランナーで上がったフライをヒットと早合点し、打球の行方を追っていた一塁ランナーを追い越してアウトになったこともある。

 まあいずれにしても、とにかくひとつでも先の塁を狙うんだ、という積極性ゆえのミスで、憎めません。だからこそ長嶋さんがいつまでも愛されるのでしょう。

 ランナーを追い越すとアウト、というのは、もちろんリトルリーグでも同じです。リトルリーグ競技規則7・08の(h)には、「前位の走者がアウトになる前に、後位の走者が前位の走者に先んじた場合」(は、後位の走者がアウト)とある。ひらたくいえばランナーの順番が入れ替わったらアウト、ということで、これは逆走のときにも同じです。

 では、こんなケースはどうでしょうか。

 同点の6回裏、二死満塁でバッターが放った打球は、ぐんぐん伸びてなんとホームランー! 三・本間に立ち止まって打球の行方を見守っていた三塁ランナーは、やった、サヨナラ勝ちだ! とわれを忘れてその場で大喜びです。一、ニ塁走者も、サク越えを見届けてゆっくりゆっくりと走り出す。

 ところがここで、打球も追わずに全速力で走っていた打者走者は、一塁を回ってもスピードをゆるめず、一、二塁間で喜んでいる一塁走者を追い抜いてしまいました。このとき三塁走者は、まだホームを踏んでいないとしましょう。

 さて、このケース、あなたはどう考えますか。サク越えのホームランなのだからサヨナラでゲームセット?

 確かにリトルリーグ競技規則7・05のaによると、フェアボールがインフライトの状態で競技場外へ出た場合、各走者はアウトにされることなく進塁できるとあります。サク越えのホームランなら、インフライトで競技場外に出たということ。つまり安全進塁権が与えられたのですから、その時点でサヨナラ勝ちになりそうですね。

 ですが、三塁走者が本塁を踏む前に、打者走者が一塁走者を追い抜いている、というからややこしい。

 あらためていうまでもありませんが、得点とは「3人のプレーヤーがアウトになって1回のイニングが終了する前に、走者が正規に一塁、二塁、三塁、本塁へと進み、触塁する度に」(4・09のa)記録されるものです。そしてリトルリーグ競技規則にはありませんが、公認野球規則ではこの4・09のaには注釈があります。長いので引用は省きますが、これは打者や走者に安全進塁権が与えられたときでも、第三アウトが成立するまでに本塁を踏まないと得点は認められない、と定めたもの。

 7・05(a)は、こう続きます。

 「(フェアボールがインフライトの状態で競技場外へ出て)、走者が各塁を正規に触れた場合」各走者はアウトにされることなく進塁でき、本塁打と得点1点が与えられる…。つまリベースを踏みそこねた長嶋さんのように、“各塁を正規に触れ”なければ、ホームランを打って安全進塁権を得たとしても、それがそのまま得点を保証するものじゃないということ。

 同様にこの問題では、三塁走者のホームインの前に、打者走者が前位の走者を追い抜いて第三アウトが成立していますから、得点は入らない、ということになります。サク越えなんだから、ホームランの1点だけでも認めてよ…といわれても、すべての塁をきちんと踏まないと得点にはならないのですね、残念ながら。

 逆にいえば、追い抜きが発生する前に三塁走者がホームを踏んでいれば、そのホームインは認められるわけ。現実には二死なのですから、バッターが打つと同時にランナーはスタートしているので、こんなケースは考えにくいでしょう。でも、やった! サヨナラ…と感激のあまり、先の塁に進むのを後回しにしてしまうこともないとはいえません。

 【テーマ10】で勉強したように、押し出しのサヨナラ四球でも、打者走者が一塁に触れないかぎりは得点にならないのです。ランナーになったらつねに、まずは先の塁に進むという意識を忘れないようにしておいてください。もっとも、長嶋さんみたいになるとちょっと行き過ぎですけどね。

(※リトルリーグの競技規則は、一般の公認野球規則とは若干ちがう部分があります。)



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